本日も当ブログをご覧頂きまして有難う御座います。
どうもテツヤです。
本日の作業紹介は、神奈川県からお越しの「VW Golf7GTI(5G)」で御座います。
さて今回のご依頼はカーエアコンの修理。
症状は以下の通り。
・エンジン始動後、20分ほどで冷風が出なくなる。
・風量も弱くなり、弱で固定されたままコントロール不能
・この症状が出ると電動ファンも停止する。
というもの。
エアコンパネルの表示上は異常無しなんですがね。
さて症状からしてガス漏れではなさそうなので、まずサイクル内の圧力異常を疑いまして。
エアコンゲージを付けてテストするも、「詰まり」などの異常はなさそう。
圧力値は正常なれど、症状が発生と同時にコンプもOFFになり圧力が戻る。といった状態。
つまりエアコン自体の機能が、ほぼOFFになるんですね、何かが原因で。
となればエアコンをコントロールしてる車両コンピューター側の可能性が高い。
さてそうなると少々面倒になりそうな、嫌な予感がしてきます。
なぜならば、この車両が「GTI クラブスポーツ」だからです。
多くの場合、ノーマルのまま乗られてる方は少ないので、何かしらカスタムされている可能性が高い。
完全ノーマルなら、修理書のドラブルシューティングがそのまま当てはまるので捗るのですが。
カスタムされている場合には、そこを踏まえて考える必要があるので、修理書のトラブルシューティングは参考程度の情報に成り下がる。
ディーラーメカがイジっている車を嫌う理由がこれですな。
これはディーラーメカに限った話ではなく、一般的に誰でもそうですけど(汗
しかも今回は、お客様は中古車で購入されて、何も手を加えずに乗られているとの事。
つまり、何処の何を弄ったか?を確認しようにも、聞く相手がいないのです…。
こういった場合には、故障診断だけで長期化するケースが多いんですよね(汗
それもDIYでカスタムしてる場合には「嘘でしょ!?」ってイジり方されてるケースもあるので余計です…。
気を取り直し、気合を入れ直しで車と対します。
先ずは診断機を使っての故障診断、車はなんと言ってるのか?を聞いてみます。
まぁなんだかんだと色々言ってくるわけですが、まとめると。
「エネルギーマネージメントによるブロアー出力削減」
と出るわけです。
その他にも色々な機能をOFFにしてるわけですが、端的に言えば。
「電力が不足してるから、優先度の低い機能の電力をカットするわ」
と言ってるわけですね。
なるほど、それならエアコンなんかは真っ先にカットされますよね。
走行中にエンジン止まるよりは全然良いわけですから。
問題は「何故に車がそうするのか?」という部分で、これを解決せねばなりません。
普通に考えれば、まず疑うのはバッテリーとオルタネータ。
ただ年式と走行距離からして、もうオルタが壊れるとは考えにくいので。
先ずはバッテリーから調べてみる。
…と発見したのがこれ。
「あぁなるほどね…。」の状態です。
カスタムで取り付けたアーシングのコードが、電流センサーを跨いでます。
これだと実際の電力消費量が分からない。
電気の流れが2本できていて、その片側しか監視していないのだから当然です。
通常は車体のアースポイントからアース線が伸びて。
電流センサーを経由して、バッテリーのマイナス端子につながりますが。
銀色に輝いているアーシングコードを通る電気は、電流センサを通らずに。
そのままバッテリーマイナス端子に繋がってるので。
ここを通る分の電気に関しては、車両側は管理できない。
視覚的に言えば「見えていない」のだから当然であります。
電気の通り道は2つあるのに、検知できてるのは1箇所だけなのだから。
そりゃあ車も「!???」となりますよね。
単純計算で半分になってしまった電力で、車両の走行を保持しようとするなら。
優先度の低い機能はOFFにして電力を確保し、重要な部分に回そうとするのは当たり前です。
試しに後付けのアーシングを外してみると。
1時間経とうが2時間経とうが不具合は発生せず、エアコンはバンバン仕事してます。
さてあとの作業はアーシングを外すか?車体のアースポイントに繋ぎ直すか?になりますが。
この作業時間は、かかっても30分ぐらいでしょう。
それよりも、この判断に辿り着くまで数時間かかってます。
専用機器や工具、修理書を見ながらの診断ですが、どれも購入した道具たちです。
我々は時間給で動いてるので、診断にかかる時間もコストになります。
よくあるご要望で「料金が発生しない程度に診てほしい」とありますが。
それは無理なのが、お分かりいただけますでしょうか?
極端な話になりますが、故障診断で1円も発生させないとしたら。
専用機器、工具、修理書は使えませんし、メカニックは1秒も動けません。
なので「料金が発生しない程度に診ること」は現実的に難しいのです。
また近年は「見積もりを見てから修理するかしないか決める」というのが主流なので。
見積もりを無料にした場合、赤字だけが発生することになります。
(修理することが前提の場合は少し話が違ってきます)
座っていても車が売れた大昔の時代の慣習が、いまだに残っている自動車業界でありますが。
消費者側の譲歩がないと、いつまでもメカニックは稼げない職業のままです。
また診断料を請求するとお客が逃げる。と考えて、診断料を頂かなかったり、安易な値下げに走ったりする。
そういった判断の経営者側にも問題があり、若い世代に負担を残すことになってます。
この問題は、もう少し積極的に解決しないといかんなぁ。と思うわけです。
2件のフィードバック
商品にせよサービスにせよ、目の前に出されたものだけで判断されがちですよね。
昔テレビ番組で笑福亭鶴瓶が「マグロ美味いけど高いなぁ。なんであんなに高いねん。」と言ったのに対して、上岡龍太郎が「ほな獲ってこい」と返したのを見て、確かにその通りだと考えたのを思い出しました。
漁業権が設定されていない所で目の前を泳いでいる魚を手づかみすればタダですが、漁師の労働、漁船や燃料、流通、販売者のコストや、海難事故、売れ残りリスクなどが見えないからかなぁと思いました。
>MoriT様
ですです。
我々の業界の場合は「車を売るための値引き」が安易に行われた結果でもありますかね。
「人を動かすこと」を0円にして、それが定着しちゃったので、今になって色々と破綻してるんだと思います。
例えば「〇〇分車検」などでしょうかね?
そこが基準になってしまうと、正確な手順での作業はできません。
「短時間」「低価格」が最優先になって、本来重視せねばいけない部分がポロリと落ちてしまって…(汗